バーレー・ワインは非常にアルコール度が高いため、醗酵に時間がかかります。
また瓶詰め後もゆっくりと醗酵が続き、時を重ねるごとに円熟したビールへと成長していきます。
そのため、結婚や誕生などのお祝いに仕込み、数十年後に飲むというようなこともしばしば行われます。
《歴史》
“バーレー・ワイン”という言葉が広く使われるようになったのは、20世紀初頭になってからで、それ以前は“オールド・エール”、“ストロング・エール”、“ストック・エール”等の名称が一般的でした。
高いアルコール度(=ストロング)を誇るビールを造るためには、長い醗酵時間と長い熟成期間が必要となります。
つまり蔵にストックしておく時間が長くなるのです。
そのため一般に飲まれるビールに比べて古い(=オールド)ためこのような名称で呼ばれていました。
温度計も比重計もなかった時代、現在のバーレイ・ワインに相当するビールは最も糖度の高い一番麦汁だけを使って造られていたようです。
アルコール度はそれ程高くなかったと考えられますが、かなり誇張して現在に言い伝わっているようで、実際より数段高いアルコール度だったと信じられている節があります。
19世紀に入り温度計や比重計が広く普及し始めたころから、ブルワー達はこぞって高アルコールのビール造りに挑戦し始めました。
これまでに無い高いアルコールのビールを造ることで、名声を高めることができたからです。
しかしながら、より高いアルコールのビールを造ろうとすればするほど、(時代とは逆行して)小さい醸造量で高いコストをかけて造らなければなりません。
そしてついには国税当局からの圧力に加え、民衆の味覚の変化が追い討ちをかけ、少なくともイギリス諸島からは事実上姿を消すこととなったのです。
《マイクロブルワリー革命》
1980年代に入り、アメリカでは各地に小さな醸造所がオープンし始め、いわゆる“マイクロブルワリー革命”が起きました。
駆け出しの醸造所やそこで働くブルーマスター達はヨーロッパの古いビールを再現したりすることで自分たちのレパートリーを広げ始めました。
そのレパートリーには自分たちの設備で造ることのできる最も高いアルコールのビールも含まれていました。
このようにして一度は滅びかけたバーレイ・ワイン・スタイルのビールがアメリカを中心として復活を遂げたのです。
歴史的にはアルコール度の高いビールの総称として使われていた“バーレイ・ワイン”という言葉もいつしか特定のスタイルを表す言葉として定着し今日に至りました。
現在の日本地ビール協会のスタイルガイドラインによると
初期比重:1.090 - 1.120
最終比重:1.024 - 1.032
アルコール度数:8.4 - 12.0 %ABV
苦味度数:50 - 100 IBU
色度数:14 - 22 SRM
と定義されています。
《東京麦酒研究会のバーレイ・ワイン》
高アルコールを得るためには高い糖度の麦汁を造ることが重要です。
モルト・エキストラクトや砂糖を加えることで簡単に目的の糖度に達することが可能ですが、ここはあえてオール・グレインにこだわりました。
そのため通常の二倍以上の麦芽を使っています。
また、濃厚なボディに負けないホップの苦味・アロマを付けるために、「フロンティア・ラガー」の5倍以上のホップを投入し、醗酵に半月、熟成に一ヶ月、さらに二ヶ月半の瓶内熟成と、通常の四倍以上の時間をかけ丹精に造り上げました。
あまり冷やさず、ブランデーのように掌で暖めながらゆっくりとお飲み下さい。
また、瓶内熟成のため時間が経つにつれ円熟したビールへと成長していきます。
数年寝かせたビールも、お楽しみ下さい。
瓶内熟成のため澱が発生します。
静かに注いで澱を入れないようにして下さい。
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